キャラクタービジネスは近年、多様化が進み、その可能性はいまも広がり続けています。今回は、株式会社キャラクター・データバンクの代表取締役社長であり、一般社団法人キャラクターブランド・ライセンス協会(以下CBLA)副理事長も兼任する陸川和男さんと、同協会の事務局長を担当する株式会社日本経済広告社(以下、ADEX)プロモーション コンテンツ局 局長 大椛武人に、キャラクタータイアップの魅力についてお話を伺いました。
《 前編 》(前編はこちら)
《 後半 》(本記事)
企業オリジナルキャラクターのニーズの現況
ー最近の企業オリジナルキャラクターのニーズについて教えてください。
陸川:
そうですね。SNSプロモーションの拡大やブランディング効果を目指した企業オリジナルキャラクターの制作は増えていると思いますが、ただ現状は、作っただけで終わってしまうケースも多いですね。これがすごくもったいない…この問題は企業単体では解決が難しくて、広告会社などの外部ブレーンが間に入って初めて解決できることだと思っています。
大椛:
確かに一定期間のブーストを目指す販促施策もそうですが、一つのブランド資産として育てていくことこそ広告会社の責務ですからね。
陸川:
中長期的に活用されて企業のアイコンになった成功例もありますが、ゆるキャラブームで生まれたキャラクターなどは眠っていることも多いですね。企業がキャラクターを作る際には、単なる販促ツールとして活用するのではなく、長期的なブランディング戦略の一環として考えることも必要かと思います。その方が、キャラクター制作にかけた費用対効果が見えやすいと思います。
大椛:
確かに企業が保有しているオリジナルキャラクターをブランディングや対象生活者とのエンゲージメントツールとして再活用する余地はあると思います。本来企業オリジナルのキャラクターには企業理念や生活者と共有したいブランディングメッセージが込められています。それをしっかりと中長期的に育成していくことが重要です。
キャラクターを通じて企業の理念やブランディングメッセージを伝えることができれば、生活者との深い関係を築くことができます。
陸川:
その上でオリジナルキャラクターを育成するには、広告会社や専門のプロデューサーが関与することが必要です。企業内では広報や宣伝部だけで、その役割を担うのは難しいですからね。キャラクターの育成には、そのマーケティング戦略やライセンス戦略などの専門知識も必要であり、それを担う我々のような専門家が求められています。
大椛:
企業のスポークスマンとなるようなオリジナルキャラクターの育成を考えているのであれば、我々広告会社や専門スタッフがしっかりとサポートしますので、ちゃんと育てていけばいいと思いますよ。但し、経費は掛かりますが。。。。(苦笑)
とは言いながらも、費用対効果の仕組みを広告会社などブレーン側も考えなければなりません。
陸川:
またSNSの普及により、キャラクターの認知度を高めるための新しい手法が生まれています。昔はとにかくTVCMの広告塔としてひたすら出稿額を積み上げる手法がありましたが、現在はSNSと適切なPR施策を活用することで、テレビ広告だけに頼らずともキャラクターのプロモーションが可能になり、より多くの消費者にリーチすることができます。これにより、企業はコストを抑えつつ、効果的にキャラクターを育成することができるのです。
大椛:
さらに企業がキャラクターを活用する際には、ライセンスビジネスを視野に入れることも重要ですよね。キャラクターを他の企業や商品とコラボレーションさせることで、いろいろな生活場面や購買場面で、そのキャラクターに触れることで認知度や好感度の向上、最近言う「推しキャラ」になり得る可能性が高くなりますし、もしかしたらロイヤリティ収入と言う新たな収益源を生み出す可能性もあります。その結果、キャラクターの価値を最大限に引き出すことになるのです。
陸川:
結局、オリジナルキャラクターを成功させるためには、企業と外部ブレーンとなる広告会社、キャラクターマーケティングプランナー(プロデューサー)などが一体となって取り組むことが必要なんです。キャラクターは単なるマスコットではなく、企業のメッセージを伝える重要なツールであり、その価値を最大限に活用するためには戦略的なアプローチが求められます。
今後ヒットするキャラクターの傾向
ーお二人の考えるヒットするキャラクターの傾向について教えてください。
陸川:
今の世の中はSNSの影響力がますます高まっているので、その展開が重要になってきます。そこで感じるのは送り手側から押し付けられるようなストーリーよりも、受け手側が自由に解釈できる余白があることではないかと感じています。
大椛:
作られたストーリーの中ではなく、受け手が描くストーリーの中にキャラクターがあるということでしょうか。
陸川:
その通りです。これにより消費者は自分自身の物語をキャラクターに投影し、より深いレベルでの共感を得ることができます。
大椛:
そう考えると今年のキャラクター大賞でグランプリを獲得したキャラクターは単なる可愛さだけでなく、読み手に委ねる部分があるキャラクターも存在していましたからね。昨今トレンドのキャラクターは、シンプルなデザインと共に、ストーリーの中に余白を残すことで、ファンが自分なりの解釈を楽しむことができるようになっているかと。
陸川:
そうですね。オープンワールドゲームのように、受け手が自分のストーリーを作れるキャラクターが今後も受け入れられるでしょう。キャラクターは単なるエンターテインメントの一部ではなく、消費者の生活の一部として存在することができるのです。
大椛:
私たちが今、日頃見かける海外や国内の著名なキャラクターは、どれもデザインのみならず、ライフスタイル性が見えるキャラクターばかり。そういった、自分の生活やスタイルに自然に溶け込むキャラクターが求められているのかもしれません。シンプルでありながら多様な解釈を許すキャラクターは、幅広い層に受け入れられやすいんですね。
陸川:
またキャラクターが持つ共感性も重要です。現代の消費者は、キャラクターに対して感情的なつながりを求めています。先ほど余白の話をしましたが、当然キャラクターが持つバックストーリーや、彼らが直面する課題に共感できることが、ファンを引きつける要素となります。
大椛:
私はキャラクターの多様性も今後のトレンドとして注目しています。異なる文化や背景を持つキャラクターが登場することで、より多くの人々が自分自身をキャラクターに重ね合わせることができるようになります。これにより、キャラクターはグローバルな市場でも成功を収める可能性が高まりますね。
陸川:
結局、今後ヒットするキャラクターは消費者とのインタラクションを重視し、彼らの生活に寄り添う存在であることが求められることは間違いありません。SNSを活用したプロモーションや、余白と共感を生むストーリー展開が、キャラクターの成功に不可欠な要素となるでしょう。
エピローグ ~ キャラクタータイアップの未来
ー最後に、キャラクタータイアップの未来についてお聞かせください。
陸川:
日本のキャラクターはグローバル展開の可能性を秘めています。既に世界的に評価されてハイブランドとのタイアップをしている日本発のキャラクターもあります。今後は国内だけで展開されていたキャラクターをグローバルに展開する視野を持つことが重要です。
大椛:
海外でも受け入れられれば、間違いなく日本企業の海外進出時のプロモーションにおいても大きな追い風となるでしょうね。
陸川:
仰る通りです。そして日本のキャラクターを世界に発信するためには、プロデューサーの育成が不可欠かと。日本のクリエイティブなキャラクターをもっと世界にプロデュースしていける人材の存在がキャラクタータイアップを、ひいてはキャラクター業界全体を牽引していくと考えています。
大椛:
そういった人材育成サポートも長年業界に携わってきた我々の役割かもしれませんね。
いつの間にか年齢も重ねましたから。(苦笑)
私と陸川さんは、もう25年間以上お付き合いをし、お互いのビジネスをしながらキャラクター業界全般の発展にCBLA設立始め色々と寄与してきたと思います。
今後も、CBLAを通じ業界発展に寄与しながら、実務レベルでも、キャラクターのリサーチングやマーケット分析ができるキャラクター・データバンク、キャラクターを活かした様々なプロモーション施策を企画するADEX。客観的なデータと戦略的なアイデアのもと、両社でキャラクタータイアップ施策の企画提案を今後もしていきたいと考えています。陸川さん、これからも引き続き一緒に共同戦線でお願いいたします。
陸川:
もちろんです、いつでもサポートしますよ。
ーキャラクターによるプロモーションに25年以上携わっているお二人だからこそ見える
知見ですね。貴重なお話、ありがとうございました。
●ADEX plusについてのお問い合わせはこちら:CONTACTページへ