「治療ニーズが顕在化しない」を、どのようにして「お医者さんに相談しよう」を創り出すのか?コミュニケーション設計についてお話していきます。
IMC推進本部業務推進局
アカウントプロデューサー 森谷健太郎
「痛くもかゆくもない」病気をどのように、罹患者に気づかせ医療機関に足を運んでもらうか?
科研製薬は爪水虫を治療する外用処方薬(塗布剤)を販売しています。爪水虫は高齢になるほど罹患率が上がるとされる皮膚疾患。60代以上の4人にひとり、日本人全体でも10人にひとりが罹患していると言われ高齢化がすすむ我が国では国民病ともいえる病気です。今回の取り組みは、この爪水虫の外用薬「クレナフィン」のプロモーション。「クレナフィン」は医療用医薬品であり製品名をあげて消費者向けにプロモーションを行うことは薬機法上認められていません。そのため、消費者向けにはDTC(Direct to Consumer)広告といわれる薬機法に抵触しない方法でターゲット(罹患者)への接触を図る必要がありました。DTC広告は主に疾病啓発広告の形を取ります。症状などを挙げて消費者に罹患の可能性を気づかせるコミュニケーションを起点とし、医療機関での受診を促すことによって自社製品への処方に結びつける広告のことです。
今回の爪水虫のいちばんの課題は、「痛くもかゆくもない」疾病だという点。続いて罹患者が多いにもかかわらず、本人に罹患した自覚症状がないために病気と捉えられることが少なく、治療ニーズが顕在化しにくいという点です。水虫は白癬菌という菌が原因で他者に感染させるリスクもある病気であるにもかかわらず、爪が白くなったのは加齢のためと考える高齢者も多く、ほとんどの罹患者は病気という自覚がないのが現状です。今回、私たちの提案は、このような課題と現状を踏まえ、ターゲット(罹患者)への直接アプローチに加えて、その配偶者や家族など身近な人からの「病院でみてもらったら?」を生み出す“家族起点のアプローチ”を設計し展開していきました。
まず、はじめにターゲットとその家族が症状を認知し、罹患者が「医療機関に行く」までの流れ、すなわち「ペイシェントジャーニー」をクライアントと共に作成しました。
ペイシェントジャーニーのフェーズに基づいて、ターゲット(罹患者)の “気づきフェーズ” から治療へのトリガーをつくり “行動フェーズ” へ
次に、ペイシェントジャーニーにメディアを反映させてメディアプランを作成していきました。ターゲット(罹患者)に親和性の高い新聞、雑誌の活用。Webメディアをセレクトしターゲティングを明確にした最適な活用。Web誘導施策によるランディングページ(疾病啓発サイトへ)への誘導。そして、治療への行動トリガーを作っていきした。
ターゲット(罹患者)の接触メディアのトップは全年代でテレビであるものの今回は予算の点、信頼獲得が重要な医療情報の提供という点から朝日新聞の提供する「ReライフFESTIVAL」とのコラボレーションを起点としました。この「ReライフFESTIVAL」はシニア向けに朝日新聞が立ち上げた企画で、新聞広告×オンラインセミナーで構成されています。
オンラインセミナーは、タレントの生島ヒロシさんと皮膚科医の「足の健康」をテーマとした対談形式。生島さんはご自身も爪水虫の罹患経験があり、その生島さんによる親しみやすい呼びかけや、朝日新聞朝刊での新聞広告「爪が白いのは加齢のせいじゃない」はターゲット(罹患者)やその家族へのトリガーになりました。行動フェーズの成果として、このオンラインセミナーとWeb広告によって爪水虫のランディングページ「爪水虫.jp」への流入者は3万人を大きく超え、そのうち55歳以上のユーザーが半数近くと、コアターゲットのシニア層にもしっかりとした訴求ができました。“じぶんゴトとしての爪水虫”の意識をもってランディングページに訪問してきてくれたところが大きなポイントです。
啓発用のWeb動画も制作し、消費者の「知りたい」に丁寧にこたえる。
コアターゲットのシニア層のスマホ普及率とともに、動画の視聴も一般化しています。そこで朝日新聞の新聞広告とオンラインセミナーをトリガーとしながらより深い理解を促すための「爪水虫をご存知ですか?」と題した5分の長尺タイプとダイジェスト版の30秒の2タイプのWebムービーを制作しました。爪水虫への疑問にこたえ、より深く理解を促すことで医療機関への受診を働きかける内容となっています。
【あらすじ】
リビングに祖父と孫娘。
孫娘「なんでおじいちゃんの爪は“ちいろく”濁っているの?」
祖父「歳を取るとみんな黄色くなるんだよ」
すると孫娘が医師となった将来の姿に変身。
「私はおじいちゃんに伝染された水虫で辛い青春を送ったの!すぐにお医者さんに
相談して!」と叱る。
そして爪水虫の仕組みと治療法に続くWeb動画です。
・5分バーションはこちら
・30秒バージョンはこちら
動画の運用などオンライン施策を実施
前出の新聞広告とオンラインセミナーに合わせて「水虫」に注目の集まりやすい時期にインターネット広告を実施しました。主なメニューは動画の視聴を促すYouTube広告とインターネット広告の約40%を占めるもっとも一般的な手法の「検索連動型(リスティング)広告」です。前者は好発年齢のユーザーに限定して配信、後者は関連ワードで検索したユーザーを誘導する施策として実施。Web動画はYouTube上に置いただけでは誰も観てくれません。ターゲット動画の存在を知ってもらい観にきてもらえるかが最も重要です。「爪が白い、濁っている」ご本人とその家族の「爪水虫」の認知を高め、啓発サイトである「爪水虫.Jp」に誘導していくなかで、疾病への理解促進を図り、その先の医療機関への受診を促す一連の流れをつくりました。
さいごに
製薬企業でも患者の治療意思の継続や悩みなどを中心に独自の「ペイシェントジャーニー」を作成することが多いと思います。しかし、私たちは今回のDTCプロモーションの第一次のゴールとして医療機関での受診を設定しました。薬機法に抵触しないDTC(Direct to Consumer)広告です。ターゲットにどのようなトリガーを設け、行動フェーズにつなげていけるか、その場合のメディアプランをどうデザインするのか…。できる限り緻密なカスタマージャーニーを作成しそれぞれのフェーズにマッチした施策を相乗的にデザインしていくことが重要です。今回は、プロモーション起点の「ペイシェントジャーニー」をクライアントである科研製薬のご担当者様とともに作成しました。もちろんリサーチチームとも連携し、一連のプロモーションに対する効果検証も行っています。「ペイシェントジャーニー」のロードマップの過程で、効果的なデジタル施策を組み込んだプロモーションプランによってしっかりとした成果を挙げることが可能になります。ADEXの提案を是非、一度お試しいただければ幸いです。
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