2019年度に続き、2020年度も「茨城県北ガストロノミープロジェクト」事業を継続して受注することになったADEXチーム。(前回記事参照)
OUTLINE
ユニークベニュー※1&ローカル・ガストロノミーの試み
2020年度、当該地域のローカル・ガストロノミーを実践する飲食店・ホテル旅館の事業者で構成されたワーキンググループで、「食を中心とした地域の資源・資産は何か?」「どうしたら茨城県北地域※2まで来ていただけるのか?」を議論してきた中、非日常的な場所でローカル・ガストロノミーを体験できたら面白いのではないか?というアイディアが浮上しました。ADEXチームで複数の候補先を検討し、最有力として北茨城市にある茨城県天心記念五浦美術館を選びました。通常、美術館をディナー会場にすることは様々な条件から難しい試みでしたが、美術館との交渉を重ね、本来の美術館の役割を損ねないよう衛生面などに十分配慮するということを前提に、今回限りということで了承を得ることができました。
「茨城県天心記念五浦美術館」はその名の通り、日本の近代美術の発展に大きな功績を残した岡倉天心ゆかりの場所。その天心の著書で世界的に高名な『茶の本』。これを今回のディナーコースの料理テーマとしました。『茶の本』は7章から構成され、茶をテーマに日常生活における自然と芸術の調和を説いたもの。今回のローカル・ガストロノミーの趣旨や世界観と、今回この場所で行うこととの文脈がつながるということで、クリエイティブディレクター&空間設計を担当した田中孝幸氏より提案があり、ワーキンググループメンバーも納得したコンセプトとなりました。また、参加者はディナー前に天心がかつて居住していた「六角堂」を訪問し、天心と日本の近代美術の概念への造詣を深めたうえで、ディナー会場へと向かうといった演出も行い、細部に至るまで徹底してプロデュースしました。
コロナ禍におけるイベントプロデュース
今回、我々が一番苦労したのが、コロナ禍の活動であったこと。ワーキンググループメンバーの合意形成から現地取材・折衝、そして、イベント当日…あらゆるシーンでコロナを気にしながらの試みでした。ワーキンググループは「オンライン」を基本に実施。通常の対面ミーティングではその場で意見交換しながら議論することができますが、オンラインではそれぞれの空気感をつかめず、ファシリテートがとても困難でした。一方で、通常は何時間もかけて会場へ行き、場所の設定なども行ったうえでようやく議論するところを、URLを送るだけで県北地域の点在するメンバーたちが一堂に集まり議論できる、オンラインの新たな可能性を見つけることもできました。
イベント自体も、「お客様の感染リスク」「本来の美術館としての役割を損ねない」「1人2万円以上払っても満足できる価値」。これらを叶える空間演出&コース料理をプロデュースするということも高いハードルでした。美術館サイドからは「虫の混入リスクをできるだけ排除するべく、花や植物で空間演出は禁止」といった条件も出され、花を中心とした空間設計を行う田中孝幸氏としては新たなチャレンジを迫られ、頭を悩ませていましたが、結果的には顧客満足も高く最上級のカスタマーエクスペリエンスを実現することができました。ADEXチームは準備期間中、合意形成・予算管理・スケジュール・ツール類のクリエイティブディレクション・イベント空間演出・PR等の広報コミュニケーション、現地の食品衛生への対応など…。仔細にわたり全てを内製プロデュースで取り組み、全身全霊を掛けてこのイベントの実施に至りました。
NEXT STAGE
本事業は2020年度が最終年度。いよいよ2021年度からはワーキンググループの事業者が中心となり自走化していきます。その際になによりも大切なのは“実践者”のやる気です。今回の一夜限りのフュージョンディナーイベント。普段では実現しないであろう5人の“実践者=料理人“のコラボレーション。それを実現できたという「経験」が自信・財産となり、さらに緊密な深いつながりとなってこれからのプロジェクトの成長に大きな影響を与えていくのではと思います。
自走化する「茨城県北ガストロノミー」。わたしたちは、プロジェクトの邁進を期待しつつ、これからも彼らのチャレンジを応援していきたいと思います。
※1 ユニークベニュー:Unique Venue-特別な場所とは、博物館・美術館、歴史的建造物、神社仏閣、城郭、屋外空間(庭園・公園、商店街、公道等)などで、会議・レセプションを開催することで特別感や地域特性を演出できる会場。(観光庁HPより)
※2 茨城県北地域:日立市・高萩市・北茨城市・常陸大宮市・常陸太田市・大子町の6市町
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